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配転命令とその有効要件について
- 投稿日 :
- 2024-05-16 08:55:08
- カテゴリ :
- 企業法務
- WRITER :
- 桜花法律事務所 中島俊明
配転命令とその有効要件について
目次
配転とは、従業員の配置の変更で、しかも職務内容または勤務地が相当の長期間にわたって変更されるもので、そのうち勤務地の変更が転勤といわれる。
使用者が労働者に対して一方的に配転を命じることを、配転命令という。
⑴ 労働契約上、配転命令権の根拠があり、その範囲内であること
⑵ 法令違反等がないこと
⑶ 権利濫用ではないこと
それぞれの具体的な要件は以下の通りである。
⑴ まず、労働契約上、配転命令権の根拠があり、当該配転命令がその配転命令権の範囲内であることが必要である。
※本来、労働者は使用者との労働契約の範囲内で労務を提供するものであり、配転についても、職種や勤務場所に関する範囲内では応じる義務があるが、範囲外の場合は、配転命令は契約内容の変更の申し入れであるから、範囲外の配転は命令によってはできず、労働者の同意(労働契約法8条)を必要とすることになる。
⑵ 何が根拠になるのか
配転について個別合意があればそれによるが、個別合意がない場合、就業規則や労働協約の規定が、労働契約の内容になっているという理論構成によって配転命令権の根拠とされる。そして、「会社は業務上の必要がある場合、配置転換を命じることが出来る」といった概括的な規定でも、配転命令権の根拠とされることが多い。
⑶ 範囲はどのように決まるのか
配転命令権の範囲については、契約、就業規則、労働契約の明文で特定されている場合はそれによるが、そうでないときは就業規則や労働協約の規定、企業内慣行、労働契約締結時の状況等から合理的に判断される。
⑷ 職種・勤務地限定契約
職種や勤務地が限定されていると解される労働契約の場合は、その限定された職種・勤務地の範囲が、配転命令権の範囲ということになる。
⑴ 法令違反がないこと
強行法規に違反する配転命令は無効である。例えば、配転が組合活動の妨害を目的とするような不当労働行為(労働組合法第7条)にあたる場合や、思想信条による差別(労基法第3条)にあたる場合などは無効である。
⑵ 労働協約違反、就業規則違反もないこと
労働協約等の人事協議条項や同意条項に違反してなされた配転命令は、その条項の趣旨にもよるが、通常は無効である。
⑴ 配転命令が使用者の配転命令権の範囲内であっても、権利濫用にあたる場合は無効である(労働契約法3条5項)。
濫用か否かの判断に関しては以下の基準に従って総合的な判断をするとよい。
① 当該人員配置の変更を行う業務上の必要性の有無
② 人員選択の合理性
③ 配転命令が他の不当な動機・目的をもってなされているか否か
④ 当該配転が労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものか否か
⑤ その他上記に準じる特段の事情の有無
⑵ 当該人員配置の変更を行う業務上の必要性
東亜ペイント事件最判(昭61.7.1)は、全国に支店、営業所を展開する企業に大卒一括採用で入社した労働者のケースであるが、「業務上の必要性についても、当該転勤先への異動が余人をもっては容易に替えがたいといった高度の必要性に限定することは相当ではなく、労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは、業務上の必要性の存在を肯定すべきである」と判示しており、業務上の必要性は容易に認められる傾向にある。
⑶ 労働者が甘受すべき程度を著しく超える不利益
東亜ペイント最判では、同居中の母親や保母している妻を残して単身赴任することと、なり得るとの不利益は転勤に伴う通常のものであると判断している。このような判例は「通常甘受すべき不利益の程度」について労働者側にも厳しい判断を示す傾向がある。また、改正育児休業法26条の適用がある場合には、その配慮も必要であるとするものもある。
⑷ 特段の事情としての適正手続き
⑤の「特段の事情」の中で、配転理由の説明や、配転に伴う利害損失を判断するために必要な情報の提供など適正な手続きを取ることを求める裁判例も出てきている。配転を命ずるにあたって、使用者が誠実に対応したかが問われるのであり、今後は労働契約法4条1項も根拠となろう。
配転命令は、労働者の配置変更に伴い職務内容や勤務地が変更される場合に使用者が一方的に命じるものですが、その有効性を確保するためには以下の要件が必要です。まず、①労働契約に基づいた明確な根拠と範囲が存在すること②法令に違反していないこと、そして③権利濫用にあたらないことです。これらの要件が遵守されていれば、命令は有効とされます。配転に関する悩みや疑問がある場合は、桜花法律事務所へご相談ください。
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