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普通解雇とは? 解雇における企業側のリスクと対策
- 投稿日 :
- 2024-02-26 14:01:41
- カテゴリ :
- 企業法務
- WRITER :
- 桜花法律事務所 中島俊明
「解雇」とは何か。解雇するとなった時の企業側のリスクは大きい?!
解雇は企業運営において避けて通れない場面に直面することがありますが、その過程は非常に複雑でリスクが伴います。本記事では、解雇の法的基準、制限される特別な期間、企業が直面する可能性のあるリスク、そしてこれらの課題をどのように解決し、対策を講じるべきかについて詳しく解説します。労働者の権利を守りつつ、企業の運営を円滑に行うための知識は、全ての経営者や人事担当者にとって必須です。
・目次
「解雇」とは、使用者による一方的な労働契約の解除を意味します。したがって、労働者にとっては突然、生活の糧を失うことになり、日常生活に多大な影響を被ることになります。そこで、解雇が有効とされるためには、次の5つの要件を満たす必要があります。
① 就業規則等に列記された解雇事由に該当すること
就業規則の絶対的必要記載事項の1つに「解雇の事由に関する事項」という定めがあります。したがって、あらかじめ就業規則等に解雇事由が列挙されている必要があるわけですが、一般に、普通解雇については「例示列挙」とすべきものと解されています。
② 就業規則等に定められた解雇手続きを遵守すること
「組合員の解雇に当たっては労働組合と協議する」といった特約が記載されているような場合には、それに従わなければなりません。
③ 労基法20条に規定する解雇予告手続きを遵守すること
使用者が労働法を解雇する場合には、少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を支払わなくてはなりません。
④ 法律的に解雇が禁止されている規定に違反しないこと
㋑不当労働行為となる解雇(労組法7条)、㋺業務上の負傷疾病による休業、産前産後休業中とその後30日間の解雇(労基法19条)、㋩国籍や信条等を理由とする解雇(労基法3条)、㋥監督機関への申告を理由とする解雇(労基法104条、労働安全衛生法97条)、㋭性別を理由とした解雇(男女雇用機会均等法6条第4号)、㋬婚姻、妊娠、出産、産休、育児・介護休業を理由とした解雇(男女雇用機会均等法8条2項・3項、育児・介護休業法10条・16条)は、法律的に禁止されています。
⑤ 解雇権の乱用に当たらないこと
労働法18条の2(労働契約法16条)に規定されている解雇権の乱用に当たらない必要性があります。この規定は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用似たものとして、無効にする」とされています。
使用者が労働者を解雇しようとする場合、次の期間については解雇を行ってはいけません(労基法19条)。
① 労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり、療養のために休業する期間及びその後30日間
② 産前産後の女性が休業する期間及びその後30日間。
ただし、例外として業務上の負傷または疾病の場合の休業について、療養中の労働者が療養開始後3年を経過しても、負傷または疾病が治癒しない場合においては、使用者は、平均賃金の1200日分の打ち切り補償を支払うことによって、その後の療養補償や休業補償などの労基法上の災害補償義務を免れることができます。
また、天災事変その他やむを得ない事由のために、事業の継続が不可能となった場合にも、例外的に解雇が許されます。この場合は、労働基準監督署長の認定を受ける必要があります。
普通解雇は、企業が従業員の能力不足や経済的理由に基づき労働契約を一方的に解除する行為です。しかし、企業の単独の判断で解雇を実行できるわけではありません。労働契約法の第16条によると、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定められています。このため、企業が解雇を望む場合でも、その理由が社会的にも認められる「客観的に合理的な理由」に基づいていないと、労働者の解雇は許されません。ここでの「客観的かつ合理的な理由」とは、社会の一般的な観点から見て納得がいく、正当な根拠を意味します。
①賃金(バックペイ):もし解雇が法的に無効であると認められた場合、解雇された後も以前と同じ条件の下で雇用関係は継続されるとみなされます。これは、雇用関係が存続しているにもかかわらず、企業による不当な解雇のために労働者が仕事に就けなかった状況を指します。解雇されていた期間の賃金に関して、労働者が実際には仕事をしていなかったとしても、その原因が企業の不当な解雇によるものであるため、解雇がなければ得られていたはずの賃金が生じていると見なされます(民法第536条第2項)。この期間に支払われなかった賃金は、解雇の時点から遡って支払われるべきものであり、「バックペイ」と称されます。例えば、従業員が月給30万円を受け取っていた場合、もしも一年間裁判が続いていたとしたら30万×12カ月=360万円を支払わなければいけません。もし解雇期間中に従業員がほかの仕事で仕事がある場合はバックペイの支払が6割以上に減額されます(労働基準法26条)。
②労働者との法的紛争:解雇が無効となった場合、労働者は復職を求めるか、解決金を受気取ることを選択することがあります。企業は、労働者との法的紛争を回避するために、適切な対応を検討する必要があります。
③労働関係への影響:解雇が無効と判定された場合、元従業員が会社に戻る可能性があります。これにより、労働環境やチームの雰囲気に変化が生じることがあります。
④会社の評判と信頼性:解雇が無効とされた場合、企業の評判や信頼性に影響を及ぼす可能性があります。他の従業員や外部のステークホルダーに対して、適切な対応を示すことが重要です。
・代替手段の検討:可能であれば解雇以外の代替手段(配置換え、再教育、部署移 動など)を検討し、従業員との合意を図ります。解雇は安易に取るべき手段ではありません。また、解雇に向けて努力してきたことを証拠化することも重要です。
・正当性を必要性の検討:解雇の正当性や必要性を慎重に検討し、社会通念上相当と認められる客観的な理由を明確にすることが重要です。
・法的要件の遵守と手続の正確性:解雇手続きは、法律や就業規則に準じて厳格に行い、必要に応じて弁護士の助言を求めましょう。
普通解雇を行う際はその法的制約と企業におけるリスクを十分に理解し、適切な手続きと対策を講じることが求められます。できる限り解雇を避けた上で、やむを得ず解雇を行う場合には、解雇権の濫用を避け、客観的かつ合理的な理由に基づいた公平な解雇プロセスを確保することが、企業と従業員双方にとって最も望ましい結果をもたらします。
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