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ギャンブル依存症問題との出会い
- 投稿日 :
- 2023-04-29 14:51:54
- カテゴリ :
- ギャンブル依存症
- WRITER :
- 桜花法律事務所 中島俊明
ギャンブル依存症問題と関わるきっかけになったのは、
京都弁護士会でカジノに反対する会長声明案を2つを書いたことがきっかけでした。
最終的には私の書いた声明案が京都弁護士会の手続を踏んで、会長声明として発表されました。
カジノ解禁推進法案に反対する会長声明とカジノ解禁実施法案に反対する会長声明。
私はこれらの声明の中で、ギャンブル依存症をカジノ解禁に反対する理由として挙げています。
ところで、私は、会長声明や意見書を出すならば、出したままで終わらずに、
きちんとそれに対する取り組みをすることが重要であると考えています。
自分が起案したものについては書きっぱなしにするのではなく、
自分がその問題に取り組むことこそが、意見書や会長声明をより説得力あるものにすると思っています。
では、カジノ反対のためのロビー活動をするのかと言われると、いわゆる政治と言われるものが苦手でした。
私は根っからの弁護士で、事件と現場に向き合うことが好きでした。
カジノの設置反対のためにロビー活動をすることも重要だとも思いますし、そういった方法で頑張っている弁護士の先生方も知っています。
ただ、私としては目の前の人を救いつつ、そこで出てきた問題を解決し、ノウハウを作ることをもって社会の解決に貢献することに
自分の適性があると信じていましたし、それこそが自分のやりたいことでした。
ただ、どうすればいいのかを見出すことはできず、時間だけが過ぎていきました。
このカジノ会長声明についてどのように向き合っていけばいいのかということを思い悩んでいたときに、
令和2年7月京都弁護士会から京都府依存症対策推進会議の委員への推薦人事の話があり、
自分から積極的に立候補する形で、京都弁護士会に推薦してもらい、京都府依存症対策推進会議の委員
(全体会議とギャンブル部会兼任)になりました。
私としては、この取り組みを通じて会長声明を作成した責任を果たすきっかけを果たそうと思いました。
ギャンブル依存症については知れば知るほどにその難しさを実感することになりました。
京都府依存症対策推進会議の委員の選任を受け、初めて参画した対策推進会議会議で
ギャンブル依存症にアプローチをしないままに、弁護士や司法書士が債務整理の問題だけを処理してしまい、
結果として、ギャンブル依存症の方々のギャンブルが止まらずに、より深刻な問題になってしまいっているという問題提起を受けました。
私は、ギャンブルを理由とした債務整理について受任を断られてしまったり、闇金を処理してもらえない、
ということは、よくある弁護士や司法書士側の問題として、認識していました。
しかし、債務整理を受任し、事件を処理すること自体は概ねその人の救済になると考えていましたので、
債務整理をすることがかえって事態を悪化させるという問題については、頭を殴られた思いでした。
私は、事件に対して真摯に取り組み、手を抜いたことはなく、自分の仕事に誇りを持っていました。
それだけに債務整理の取り組みが否定されたように感じ、非常に悔しかったことを覚えています。
一方で、私は、この指摘は正しいと感じていました。
根本ギャンブルが止められなければ、債務整理をしても根本的な解決にならず、一時問題を先送りするだけの結果になります。
この問題意識に対する解決を探すことが、ギャンブル依存症で悩む方々にとって必要なことだと感じました。
それにはギャンブル依存症についてよく知らなければなりませんでした。
正しい事実の認識を得なければ正しい答えは出せません。
今でもギャンブル依存症の勉強中ではありますが、当時は本当になんとなくしかわかっていなかったのです。
ギャンブル依存症の病気のこと、性質、ギャンブルのこと、ギャンブル依存症の方の家族が抱える問題のこと、
そういったことをもっと知りたいと思いました。
そこで、会議で隣の席に座ったギャンブル依存症家族の会の方が目に止まりました。
弁護士というなれない存在を目にして、とまどいつつも一所懸命にギャンブル依存症の問題に語ろうとする姿に
率直に好感を抱き、まずはこの人の所属するところに行って話を聞いてみようと思い、
令和2年10月に初めてギャンブル依存症家族の会に参加させて頂き、この問題に取り組む第一歩を踏みだしました。
それからギャンブル依存症の方向けの債務整理に取り組み始め、
去年くらいからは常時10名以上のギャンブル依存症の方の債務整理を引き受けるようになり、
今年に入ってからもその数は増え続けています。依頼された方の頑張りもあり、依頼終了時には多くの方が
ギャンブルを一定期間やめている状態にできていると感じています。
このやめ続けられた期間をきっかけにして、その後も、回復を続けていってほしいと思います。
あのときの問題提起にされたことに対する答え、
ギャンブル依存症と向き合いながらの債務整理を少しずつ実現できてきているのではないかと思います。
これからも頑張っていきます。
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