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黙示の指示により労働した場合には労働時間に該当するとした裁判例
- 投稿日 :
- 2023-01-04 20:07:48
- カテゴリ :
- 企業法務
- WRITER :
- 桜花法律事務所 中島俊明
労働時間の裁判例について学んでいきます。
最高裁判所平成19年10月19日判決【大林ファシリティーズ(オークビルサービス)事件】
この事件はマンションの住み込みの管理人夫婦が時間外労働及び休日労働の割増賃金を求めた事案です。
論点は、平日の仕事のない時間(不活動時間)や休日の時間外労働が労働基準法の労働時間に該当するのかというでした。
この点について最高裁は、最高裁判所平成12年3月9日判決(三菱重工長崎造船所事件) に触れたうえで、「不活動時間において、労働者が実作業に従事していないというだけでは、使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず、当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。したがって、不活動時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである。そして、当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である。」と判断しました。
当該労働時間に労働から離れることが保障されていて初めて使用者の指揮命令から外れることになる=仕事をしていなくても労働から離れることが保障されていないのであれば労働時間に該当すると判断したのです。
また、最高裁は「さらに、本件会社は、被上告人らから管理日報等の提出を受けるなどして定期的に業務の報告を受け、適宜業務についての指示をしていたというのであるから、被上告人らが所定労働時間外においても住民等からの要望に対応していた事実を認識していたものといわざるを得ず、このことをも併せ考慮すると、住民等からの要望への対応について本件会社による黙示の指示があったものというべきである。そうすると、平日の午前7時から午後10時までの時間(正午から午後1時までの休憩時間を除く。)については、被上告人らは、管理員室の隣の居室における不活動時間も含めて、本件会社の指揮命令下に置かれていたものであり、上記時間は、労基法上の労働時間に当たるというべきである。」として、明示の命令ではなく、黙示の指示であっても指揮命令にあったとして労働時間に該当すると判断しています。
この判決のポイントは、①労働からの解放が保障されていなければ仕事をしていない状態であっても労働時間に数えられる、②黙示の指示に基づく労働も労働時間に該当するという2点です。
「残業しなさい」という命令はなくても、仕事をしなければならない状況にあり会社を黙認していたのでれば、残業代を支払わなければならないということで、重要な判決です。
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