弁護士コラム
Column

残業代請求における基本的な考え方

投稿日 :
2023-01-03 19:36:03
カテゴリ :
企業法務
WRITER :
桜花法律事務所

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

今年は弁護士コラムをしっかりと書いて参ります。

 

今回は残業代請求における労働時間の考え方について勉強していきます。

労働基準法は次のとおり、基本は1日8時間までを労働時間の限度としています(労働基準法32条)。
例外的に36協定がある場合には労働時間を延長したり、休日に労働させるできるとしています(労働基準法36条)。
そして、この労働時間の延長された労働時間や休日労働に対して割増賃金が支払われることになります(労働基準法37条)

残業代請求を行う場合には、労働時間がどのような時間を指すのかが問題となります。
例えば、早出出勤をしたとき、終業時間後に居残って労働した場合、事務所で昼休憩時間中ではあるが電話などの対応をしなければならないときなどが労働時間に該当するのかが問題になります。

最高裁判所平成12年3月9日判決(三菱重工長崎造船所事件)では労働時間について以下のとおり判断しています。

「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない」、「労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内で行うことを使用者から義務づけられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為を所定労働時間外において行うものとされている場合であっても、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、労働基準法上の労働時間に該当する」

 

この判決のポイントは次のとおりです。

①労働時間についての基本的な考えを示した最高裁判所判決。
②労働時間とは
労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間。
③労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるか否かにより客観的に定まる。
④労働契約、就業規則、労働協約等の定めに左右されない。


労働契約や就業規則、労働協約等でこの時間は労働時間には該当しないと定めたとしても、労働者が使用者のいうことを聞かなければならない状況であれば労働時間に該当します。契約書に昼休憩と書かれていても、実際に労働しなければならない状況であれば労働時間に該当します。

この判例は労働時間についての基本となる基準を定めたものにあたりますが、この判例で労働時間についての種々の問題を全て解決できるわけではありません。そのため、この判決以降も多くの労働時間についての判決が出ています。

#労働問題 #残業代請求 #最高裁判例 #労働時間

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