解決事例
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解決事例報告Solution case report

  • 破産申立人代理人による債権者への按分弁済の方法によって裁量免責を獲得
    2026-07-31
    30代の会社員の男性は、ギャンブルをやめることが出来ず借金を繰り返し消費者金融への返済が払えず任意整理をしたが、その後新たにした借金が妻に発覚、ギャンブル依存症ではないかと思い自助グループに参加するようになり、そこで知り合った仲間から債務整理を勧められ、当事務所に相談しました。

    相談事例

    依頼者は、依頼時に30代の会社員の男性です。
    大学を卒業し、一部上場企業に就職しました。この頃はパチンコにはまり(月5万円ほど)、月々の給料や賞与はギャンブルやお酒、遊びに使い、貯金はありませんでした。また、この頃に初めてクレジットカードキャッシングを使い始めました。
    その後、仕事の上のトラブルをきっかけに仕事を退職になりました。退職金はあったものの、トラブルに対する弁償で全て使っていました。その頃に結婚した妻からお金を出してもらったり、家庭内窃盗をするようになり、パチンコやスロットにのめり込んでいきました(月8万円ほど)。
    その後、再度就職するも、職場の人間関係で悩み、パチンコに使うお金が増えていきました(月9万)。この頃には消費者金融からの借金も始まりました。会社を退職し、地元に戻り、アルバイトをしながら就職活動を始めました。妻に黙って1日中ギャンブルをしたり、妻の財布からお金を盗む、嘘をつくことが日常となりました。
    その後、現在勤めている会社へ就職しました。仕事は依頼者様の性格に合っており、順調でしたが、少しのストレスから逃げるために、ギャンブルをし続けました。賞与が手渡しの為妻に隠し、全てギャンブルや遊びに使っていました。消費者金融への返済が払えず(月6~8万ほど)任意整理をしましたが、任意整理も払えず、最終的に妻に発覚して肩代わりしてもらいました。
    コロナになり、何となく始めたオンラインギャンブル(競艇・競輪・競馬)にはまり、更に大きな借金、家庭内窃盗などで、何とかしてお金を工面してギャンブルをする生活を送るようになりました(パチンコ等:10万円、競艇・競輪・競馬:10万円)。
    その後、新たにした借金が妻に発覚したことをきっかけに、ギャンブル依存症ではないかと思い、自助グループに参加するようになり、ギャンブルをやめるようになりました。その後、自助グループで知り合った仲間から債務整理を勧められ、当事務所に相談しました。依頼者様の債務は比較的300万円程度であり、任意整理も選択肢に上がりましたが、自己破産手続を通じて自身にけじめをつけ、ギャンブル依存症の回復を進めていきたいとの想いから自己破産手続を方針としました。

    解決結果

    1.弁護士は、債権者各社に受任通知を送付し、依頼者様への取立は停止しました。それとともに、弁護士は、破産の準備期間中に、自助グループ等のミーティングへの参加をするように説明するとともに、その記録をつけて証拠化してもらいました。また、家計収支表を作成するように依頼しました。依頼者は、自助グループにとても魅力を感じている様子で、自助グループでの活動が楽しいと語ってくれました。
    準備段階で苦労したのは退職金の算定です。退職していなくても現時点で自主退職した場合の退職金の8分の1を財産目録に計上する必要があります。特に明確な計算式のある資料がなく、退職時の諸事情を総合考慮して決める旨が記載されており、どのように退職金を算定するか課題でした。そこで、依頼者様は、正直に会社の上司に自分がギャンブル依存症であることをカミングアウトして、退職金見込額証明書を作成してもらうことができました。その際に、上司から、「今まで通り頑張ってくれたら良い。しんどい事はしなくて良い、いつでも相談して欲しい」と温かい言葉をかけてもらい、依頼者様も「感謝しかない。可能であれば、このままこの職場で素直にがんばりたい」と仕事に回復に決意を新たにしていました。
    2.受任後8カ月ほどで破産申立を行い、破産開始決定が出て、破産管財人が就任しました。この管財人からは、初期の段階から裁量免責に得るためにお金を破産財団に組み入れることをほのめかしていました。ただ、弁護士は、多少のお金を入れたところで管財人の報酬になるだけで、そのような積立は必要がないと判断し、拒否しました。そうしたところ、依頼者様の債権額は小さいことから、家計収支表を出し、ミーティングへの参加記録や反省文も出したにもかかわらず、普通なら1度目、長くても2度目の債権者集会でも破産手続は終わる様子を見せませんでした。そして、第2回の債権者集会の前に、「どう考えても免責不許可で、債権者への配当は裁量免責の免責を書くには債権者への配当が不可欠」という言葉を用い、精神的な圧迫を受けながらここまで来ている。」を弁護士宛ての文書で通知し、依頼者様に対して多額の金銭を支払うように圧迫を加えてきました。一方で、破産管財人は、いくら積立てればいいのかというこちらの質問には事前に応えませんでしたが、債権者集会の中で裁判官が口にした40~50万円を積立するように言いました。
    3.他のギャンブル依存症の方の事件と比較してもあまりにも金銭的な負担をかける扱いに弁護士は強い怒りを覚えました。免責を盾にした恐喝のようにしか感じられませんでした。真面目に回復に取り組んできた依頼者の方もひどく傷ついた様子でした。何より免責観察型の事件であるにも関わらず、最初の引継ぎ時以来一度も依頼者本人と会ってすらいませんでした。
    そこで、弁護士は管財人が第2回集会前に出した書面を謄写したところ、「破産者が述べるように「今後ギャンブルに手を出すことにないよう裁判所を通じたけじめをつけたかった」のであれば、給与所得者の個人再生が適した事案である。」、「配当をしないことが手続的な公正さを欠く」という依頼者に向けるものとは違うトーンで配当をすべきとの意見を述べていました。裁判所にはいい顔をし、破産者である依頼者や弁護士には恐喝まがいの言葉を使っていました。
    そこで、破産者代理人は、裁判所に対して、①破産者が現在有している財産は新得財産であり、依頼者妻名義の財産も含まれていること、②破産者については近時の免責不許可の事例と比較しても裁量免責が相当であること、③破産管財人の考えは独自の価値観に基づき経済的再生を阻害するものであると弾劾し、破産管財人が依頼者に対して向けた文書を裁判所に資料として出し、任意であるはずの積立についてこのような圧迫を加えることは理解に苦しむと報告し、40、50万円の積立ではなく、20万円の債権者への按分弁済を提案しました。40万、50万円の積立をした場合20万円程度は破産管財人の報酬になります。本来ならこれも不要だと思いますが、債権者の返済なら本人も納得できる一方、まともな免責調査もせず恐喝めいた積立の強要をした管財人にこれ以上1円も渡したくありませんでした。
    そうしたところ、裁判所は免責観察は管財人の役割であるため管財人に連絡してほしいと言われたため、管財人に按分弁済の提案をしたところ、第3回債権者集会でこれを素直に受け入れました。この点については、裁判所の態度から管財人に対して指導があったものと伺われました。
    4.その後、健全化した給与の中から20万円を弁護士が預り、債権者に按分弁済をし、そのことを管財人に報告しました。前例もあまりない手続ではありましたが、配当を参考にしつつ、あくまで任意の弁済であることから、簡易な手続きで按分弁済を実施しました。そして第4回の債権者集会で管財人から裁量免責の意見が出て、無事に免責許可決定の意見を出すことができました。

    弁護士のコメント

    普段は真面目に回復に取り組んでいれば、1度目の自己破産でそこまで強い当たりを管財人から受けることはありませんが、この事件は違いました。管財人のほとんど会おうとせず、ひたすらお金だけを強く求められるという扱いに依頼者様も困惑し、傷ついていました、
    私自身も苦しむ依頼者様を支えるべくこまめに連絡を入れましたし、依頼者様には自助グループでできた沢山の仲間がいました。その存在があって、管財人の圧力と理不尽を乗り越え、免責をとることができました。自助グループの仲間の絆に深く感謝した事件です。
    事件としては本来的に債権者に支払うのは管財人による配当というのが一般的で破産申立代理人にである弁護士が按分弁済をするというのは特殊な例で、正直裁判所や管財人が了解するかわかりませんでしたが、何とか説得でき、依頼者の損失(管財人報酬分)を減らすことができました。また、弁護士が戦う姿勢を見せたことで救われたという言葉も頂きました。
    ギャンブル依存症の当事者を取り巻く偏見を改めて感じた事件でもあります。真摯に作成された自助グループへの参加記録や家計収支表をみれば、たいていの管財人は厳しさの中にも敬意をもって見てくれます。免責に大きな影響を持つ、管財人と正面切って戦うということは私の経験上も珍しいことでした。ただ、今回の管財人と戦わないことは、生き直そうと努力する依頼者様を否定することになると感じました。実際に戦う姿勢を見せたことで依頼者様は救われたと感じてくださったようで、その点ではとてもよかったと思っています。
    あと、依頼者様は破産申立直後に大きな出費をしていました。やむを得ない部分もありましたが、これから免責をうけようとするのにふさわしいものではありませんでした。それまでギャンブル依存症から回復すれば、経済状況は好転すると考えていましたが、経済感覚も磨いていかなかければ、やはり再度多重債務に陥る要素になると考え、家計収支表をきちんと作成することの大事さを実感した事件でもあります。

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