会社の商品を横領などしていた事案について、懲戒解雇を回避し自主退職、また示談交渉で刑事事件化も回避しました。
2021-07-20
20代男性相談者様は、不景気により給与が下がり生活が苦しくなったことから 会社の商品を横領などしてしまいました。そのことが発覚し、就業禁止処分を命じられることになり・・・
相談事例
相談者様は、本件依頼時20代の男性です。相手方には、新卒で採用されて仕事をしていました。
しかしながら、相談者様は、不景気により相手方からの給与が下がり生活が苦しくなったことから、相手方の製品を転売するために無断で値引購入して転売したり、相手方の販促品を無断で持ち出して転売したりしてしまいました。そして、そのことが相手方の調査によって発覚し、相談者様は就業禁止処分を命じられることになりました。
相談者様は、このままいけば相手方から懲戒解雇されること、懲戒解雇されれば経歴に傷がつき、再就職が難しくなることから、当事務所の弁護士に相談し、懲戒解雇を回避するため弁護士に委任することにしました。
解決結果
1.相手方では、本件事件とは別に残業代を未払いにしていたということがあり、受任して間もなく相手方から未払残業代が数十万円支払われることになっていました。そこで、弁護士は、相手方に対して、内容証明郵便通知書で相談者様が自らの犯した行為を認めるとともに謝罪するとともに、謝罪と被害弁償の趣旨として未払残業代を全額放棄することを伝えました。そして、同通知書で相手方に、相談者様が深く反省する一方で、相手方における信頼を損ない、相手方で働くにふさわしい人物ではないこと、社会内で更生をしていきたいことから、懲戒解雇や諭旨解雇ではなく、自己都合による自主退職させて頂けますようお願いしますと伝えるとともに、あるいは合意退職という形でも結構ですと通知しました。また、同通知書で、自主退職や合意退職が叶うならば、退職金も放棄する意思表示を同内容証明郵便で行いました。
2.そうしたところ、上記内容証明郵便通知書が到着してから2週間が経過してから相手方から就業規則や賞罰規定にのっとり厳正に処分する旨の回答書が弁護士宛てに届きました。
3.そして、相手方から、本件についての弁明の機会を行うと言われました。そこで、弁護士は、既に自主退職の意思表示をしてから2週間が経過しているので既に自主退職は成立しており、懲戒手続を実施することはできないと伝えました。そうしたところ、相手方は、当方の言い分を認めたので、相談者様は無事に相手方を自主退職という形で退職することができました。
4.その後、相手方に対して被害弁償についての示談を行い、示談金を支払った結果、刑事手事件化される可能性も回避することができました。
弁護士のコメント
自主退職の意思表示から2週間経過すれば、自主退職が成立し、懲戒解雇できなくなります(民法627条)。受任当初できるだけ、示談交渉により自主退職や合意退職したいとの考えを持っていましたが、相手方の就業規則を見ている限り、未払残業代や退職金を放棄したとしても、かなり懲戒解雇がなされる可能性が高いのではと考えました。そこで、懲戒解雇が強行される可能性を考え、内容証明郵便通知書に自主退職の意思表示を入れました。もちろん、2週間が経過する前に懲戒解雇が強行されればこの方法も意味をなしません。全ては相手方がどのような対応をとるかにかかっていたのですが、おそらく、相手方は内容証明郵便通知書を単なる嘆願書のように考え、自主退職の意思表示があることを検討せず、回答書を送るにとどめたのだと思います。その結果、相談者様は、自主退職をすることができました。
契約時に私から説明を受けて懲戒解雇が回避するのは難しいと考えていた相談者様は自主退職できたことに喜んでいただけました。ただ、相談者様のしたことは悪いことであることは間違いありません。これについては、最終的に示談による相手方への被害弁償も、放棄した未払賃金などを含めれば、相手方に実損を超える額を支払ったものであることから、一定の償いはできたのではないかと思います。相談者様には二度とこのようなことをせず、真面目にやり直してほしいと思います。