株式取引必勝情報の詐欺被害案件で実質的に被害金額以上の被害回復を果たすことができました。
2021-05-12
70代男性の相談者様は,株式取引で儲けるべくそのための情報を探していたところ、インターネットで投資助言を行うというサイトの存在を知り、会員登録を行いましたが…
相談事例
相談者様、本件依頼時70代の男性です。
相談者様は,株式取引で儲けるべくそのための情報を探していたところ、インターネットで投資助言を行うと自称していた事業者の相手方Aの運営する本件サイトAの存在を知り、会員登録を行いました。そして、相手方Aより、確実に儲けることができる株式情報を提供するとの勧誘を受けた。そのことを信用した相談者様は、相手方Aから株式に関する情報を購入し、現金振込やクレジットカード決済の方法で合計147万4460円を支払いました。そして、相談者様は、相手方Aから得た株式情報にしたがって取引を行いましたが、多額の損害を被ってしまいました。
その後、相談者様は、投資助言を行うと自称していた事業者の相手方Bから確実に儲けることができる株式情報を提供する旨の勧誘を受けました。そのことを信用した相談者様は、相手方Bから株式の情報提供を受けることとして、情報提供料金として42万円をクレジットカード決済で支払ってしまいました。そして、相談者様は、相手方から得た情報にしたがって株式取引を行って多額の損害を被った。
相談者様は、相手方Aや相手方Bの指示にしたがって株式を購入しても利益をあげることができなかったことから、本件取引に不審を抱き、当事務所の弁護士に本件事件を委任しました。
解決結果
1.弁護士は、相談者様が利用したクレジットカードの決済代行業者に連絡を送るととともに、相手方Bに対して内容証明郵便通知書を送付しましたところ、相手方Bにおける42万円の決済についてはクレジットカード決済がなされ、カード会社からお金が返金されました。しかし、これ以外の被害金額については交渉では被害回復することができませんでした。
2.そこで、弁護士は、相手方らに対して訴訟を提起することにしました。そこで調査をしながら訴状の準備を進めていたところ、相手方A及び相手方Bは実は、黒幕会社である相手方C、相手方D、相手方Eが運営するペーパーカンパニーであり、金融商品取引法上無登録で投資助言業を行っていたことが証券取引等監視委員会の発表で明らかになりました。そこで、弁護士は、相手方Aから相手方Bだけでなく、相手方C、相手方D及び相手方Eの会社を被告と相手方Aから相手方Eまでの代表取締役を被告にしたうえで、さらに被告にクレジットカードの決済代行業者2社も加え、合計11名を被告として訴訟を関西の地方裁判所に提起しました。その際に、少しでも被害回復の可能性を増やすために、証拠は少なかったのですが、株式の取引による損害も上乗せして訴訟提起をしました。
3.そうしたところ、相手方らから東京の地方裁判所への移送申立がなされ、一旦は東京地方裁判所に移送される決定がなされましたが、即時抗告を行った結果、最終的に提訴した移送はされることはなくなりました。
4.そして、相手方C、相手方D及び相手方Eとその代表取締役らの代理人弁護士から連絡があり、相手方C、相手方D及び相手方Eとの訴訟上の和解をしてほしいとの打診がありました。詳細を聞くと、振り込め詐欺被害救済法によって口座凍結がされていて引き出せない口座があるので、訴訟上の和解をするので、そのお金を差し押さえしてほしい、その代わりに他の被告らについて請求を放棄してほしいとの打診がありました。確かにその弁護士いうとおりに、相手方C名義に預金が9000万円ほどあるのが預金保険機構のホームページでわかりました。そして、状況をみたうえで、すぐに和解して差し押さえをすれば奏功する可能性が高いと踏んだ弁護士は相談者様と協議して訴訟上の和解をすることにして和解金200万円の訴訟上の和解を行い、他の被告らに対する訴えは取り下げました。なお、相手方Aと相手方Bとその代表取締役について欠席判決がでています。
5.そして、当然のように相手方Cは和解金をきめられた期日まで支払わなかったため、すぐさま相手方Cの預金口座についての差し押さえを行い、200万9848円を回収することができました。
弁護士のコメント
情報代金に関する被害金額の合計が189万4460円で、訴訟前の交渉と差し押さえの結果として242万9848円の被害回復ができました。株式の取引損を考慮すると被害金額を下回るのですが、取引損について手持ちの証拠も弱かったので(それでもある程度の勝てる算段はありました。)、実質的に被害金額以上の回収ができたといってよいと思います。相談者様にも大変喜んでいただくことができました。
今回は相手方C、相手方D及び相手方Eから口座情報の提供を受けたうえで差し押さえるという奇妙な方法にはなりましたが、それも訴訟提起前の情報収集で黒幕である相手方C、相手方D及び相手方Eを補足できたからだと思います。これらの関係者を除いた訴訟であったならば、このような解決にはならなかったと思います。
訴訟を仕掛ける側は時効でもない限り、自分にとってベストと思われる形で十分に準備して訴訟提起をすることができ、いかに有利な状態を作り出して訴訟提起を行うかは、戦略上重要なことです。この事件は、そのことを改めて印象づけてくれました。