解決事例
Examples of solutions

解決事例報告Solution case report

  • 養育費増額調停を利用して親権を維持しました。
    2019-08-07
    離婚調停の際に面会交流について詳細を定めなかったことで・・・

    相談事例

    相談者様は、本件依頼時40代の女性です。本件の相手方である元夫との間で調停離婚が成立し、お子様(本件依頼時14歳)の親権は相談者様が獲得したのですが、離婚調停の際に面会交流については詳細を定めていませんでした。
    そのような状況下で、相手方は、離婚成立後も相談者様とお子様との生活に介入したり、離婚調停で決まった事項を守らなかったり、午後11時を過ぎてもお子様を自宅に帰さないなど不適切な面会交流を実施したりしていました。相談者様は、こうした相手方の行動に悩んだ末、当事務所の弁護士に対して相談し、本件事件を委任することにしました。

    解決結果

    1.弁護士は、相手方に対して内容証明郵便通知書を送り、これまでの相手方の不適切な行動について改善を求めるとともに、今後の面会交流については弁護士を通じて相談者様の事前の承諾を得るよう求めました。しかし、帰宅時間が午後11時を過ぎる交流をやめるなど相手方の態度は一部改善したものの、こちらの求めた事前承諾による面会交流の要請を無視し、無断での面会交流を継続しました。
    そこで、弁護士が再度、内容証明郵便通知書を送付して事前に承諾をとって面会交流をするように要請しました。そうしたところ、相手方は、弁護士に依頼して、こちらの主張について反論するとともに、面会交流調停を起こす旨を予告してきました。
    2.そのような予告を受けて検討した結果、その時期は、丁度お子様の年齢が15歳となる時期で、養育費の増額が認められる時期に差しかかっていたことから、面会交流調停にあわせてその当時の養育費月額1万5000円の増額調停を申し立てることにしました。
    また、相手方は定職にはついているものの、その収入は年収350万円程度で相談者様の半分程度しかなく、離婚調停ではそれが決め手となって、相談者様が親権者になりました。このように相手方の弱点は、このような経済的基盤の脆さにあると考え、今回養育費の増額を求めることで、相手方に経済的にプレッシャーを与え、調停においてこちらに有利な事情が引き出すことができるのではと考えて、養育費増額調停を行うことにしました。
    この点、相手方が養育費の増額を拒絶する可能性も考えましたが、面会交流調停で自分に有利な条項を定めようとする手前、相手方において養育費の増額は拒絶しにくいだろうとも考えました。
    3.その後、相談者様から養育費増額調停の申立が、相手方からは面会交流調停のほかに、親権者変更調停の申立がなされました。相手方の申立書を見る限り、相手方の要求は、親権者変更が主たるもので、面会交流については予備的なものという位置づけでした。親権者変更調停であっても養育費の増額はこちらに有利になること弁護士は考えていました。
    4.上記3つの調停事件は、同一期日で行われましたが、最初に比較的審理のしやすい養育費の増額について調停が進められ、相手方は弁護士の読み通り養育費の増額にあっさりと応じ、養育費を月額1万5000円から月額3万円に増額するという調停が成立しました。
    5.そして、養育費増額調停が成立したにもかかわらず、相手方は養育費の支払いを遅延するようになりました。まさに弁護士の予測したとおり、相手方の経済的基盤の脆さが露呈することになりました。
    そして、弁護士は、親権者変更について、相手方の主張に対して反論することはもちろんのこと、こうした養育費の不払いを細かく指摘し、養育費の支払いを怠る者は親権者として相応しくないということを強く主張しました。また、お子様がそれなりに学費のかかる私立高校への進学を決めたことから、経済力のない相手方は、なおさら親権者として相応しくないという主張もしました。このように相手方の経済的基盤の弱さを徹底的に突いて、相手方が親権者になることはありえないという雰囲気を作り出しました。
    6.そうしたところ、お子様が15歳であることを踏まえて基本的にはお子様の意思が最優先であると述べながらも、養育費の不払いについては調停委員も家庭裁判所調査官も無視できず、調停の流れは大きく相談者様側有利に傾いていきました。相手方は、家庭裁判所調査官による調査を希望し、そこに望みを託しているようではありましたが、調停の流れが大きくこちらに傾いた中で、結局のところ、家庭裁判所調査官による調査が実施されることはありませんでした。
    家庭裁判所は、相談者様と相手方が調停外でお子様に意思確認をして、お子様が親権者変更を積極的に希望しない限り、家庭裁判所の調査官調査を行うまでもなく、親権者の変更は行うべきではないと結論づけました。そして、相談者様と相手方が、お子様への意思確認を行った結果、お子様が相談者様と相手方双方に対して親権者変更を希望しない旨の意思表示をしたので、相手方は親権者変更調停を取り下げ、親権は維持されることになりました。
    7.なお、面会交流については、基本的には高校生になったお子様に気持ちを尊重して実施することを前提に、夜22時までに自宅に帰るというお子様の安全に配慮した調停を成立させることができました。

    弁護士のコメント

    養育費増額調停によって養育費の増額を勝ち取るとともに、養育費の不払いを誘発させて、相手方の親権者の適格性を否定するという作戦が奏功したことが、親権維持の結論を導くことができた大きな要因だったと思います。調停員も調査官も養育費を満足に支払っていない人が親権者として名乗りを上げていることに強い違和感を持っているようでした。
    相談者様も親権を維持できたことで大変に満足していただけました。
    本件を通じて、事案をよく検討して、こちらの強みを生かしつつ相手方の弱点を的確に突いていくことと戦略的に手続を進めることの重要性を再認識させられました。

カテゴリー

最近の事例

よく読まれている事例

page top