弁護士コラム
Column
- HOME >
- 弁護士コラム |
自宅待機命令と出勤停止処分
- 投稿日 :
- 2023-04-12 19:15:06
- カテゴリ :
- 企業法務
- WRITER :
- 桜花法律事務所 上野健太
Ⅰ 自宅待機とは
自宅待機命令とは、会社が従業員に対して、業務命令として自宅での待機を命じることをいいます。
会社と従業員との間には労働契約が締結されており、会社は労務指揮権に基づいて従業員に対し業務上必要な命令を下すことができます。
そして、業務命令については、それが正当な理由があり、相当性の認められるものである限り、従う必要があります。
(1)自宅待機命令が違法となる場合
自宅待機命令は、例えば従業員に対し懲戒処分を行う際や、従業員が不正行為を行っていると疑られる場合等に、その事実関係調査のためになされることがあります。
自宅待機命令は、このような正当な理由がある場合に相当の期間をもって行われる限り問題となることはないでしょう。
しかし、従業員を退職に追い込むための不当な目的で自宅待機命令を行う場合や、不当に長期間自宅待機を命じることは違法となる可能性があります。
そのため、自宅待機を命じる際には正当な理由の有無や期間の相当性等を慎重に判断する必要があります。
(2)自宅待機命令中の給与の支払い
自宅待機期間中の従業員は、基本的には会社の都合により待機しているに過ぎないため欠勤として扱うことはできません。そのため、退職勧奨の検討期間としての自宅待機命令や懲戒処分の調査期間としての自宅待機命令の場合、基本的に従前通り給与を支払う必要があります。
もっとも、自宅待機を命じるにつき会社に不可抗力の事由がある場合には従業員に対し給与を支払う必要はありません。
このように、自宅待機を命じている従業員に対する給与支払いの有無については慎重に検討する必要があります。
Ⅱ 出勤停止処分とは
自宅待機命令と類似するものとして、出勤停止処分があります。
しかし、出勤停止処分は、懲戒処分の一つとしてなされるものであるため自宅待機命令とは性質が全く異なります。
(1)出勤停止処分が違法となる場合
出勤停止処分は懲戒処分の一つとしてなされるため、出勤停止処分を行う際には懲戒事由が必要となります。
そして、客観的な証拠に基づき出勤停止処分をするに相当する懲戒事由が認められる場合に、相当な期間の出勤停止処分が許されることとなります。
そのため、懲戒事由が認められない場合は当然として、出勤停止期間が懲戒事由に比して不相当に長期間に及ぶ場合にも違法となります。
その他、懲戒処分をする際に就業規則上定められている諸規定に則って出勤停止処分が行われる必要があります。
(2)出勤停止期間中の給与支払い
出勤停止の懲戒処分は、従業員の出勤を停止することに加えて、その期間の給与を支払わないということを含んでいると解されます。
そのため、会社は従業員に対して、出勤停止期間中の給与を支払う必要はありません。
もっとも、出勤停止期間中であっても賞与については通常どおり支払う必要があるため、賞与を不支給とすることは違法となる可能性があります。
以上のとおり、会社が従業員に対して自宅待機命令や出勤停止処分をする際には、正当性や相当性、給与支払いの要否などの法的な問題について、事前に十分検討することが必要となるでしょう。
検索
カレンダー
< |
> |
|||||
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |